2010年2月10日水曜日

マスコミが騒ぐほど電子書籍の時代はすぐには来ない



今週頭、Kindle2がウチにやってきた。もともと「電子書籍なんてまだまだだろ」と思っていたのだが、アスキー.jpの記事に興味を持って、つい購入してしまったのだ。ネットにもつながる通話料無料のモバイルデバイス、というのが、非常に魅力的だったし、ちょうど電車の中などで外国書籍が読みたいと思っていたので、3万円以下なら高くはないと思った次第。さて、実際に使ってみた印象なのだが、これは確かに良くできた端末だが、電子書籍の時代はまだまだ来ないなという思いを強くすることになった。


まずKindleの長所・短所を挙げてみよう。


<長所>


  • 3G端末なので直に電子書籍が買える

  • E-inkで見やすい

  • バッテリー持続時間が長い

  • PCより軽い

  • Webも見られる

  • <短所>


  • 日本語が使えない(ハックで日本語表示はできても、入力はまだできない)

  • E-inkなので画面遷移が遅い

  • 文庫より重い

  • Webのようにキーワードで検索とかしにくい

  • 意外にKindle Storeの品揃えが少ない(もちろん日本語無し)

  • 上記のような端末の長短はすでにWebのあちこちで語られていることだと思う。だが、Kindleを端末本体だけで見ていてもユーザー体験や市場への影響度を理解することはできない。書籍の購入方法や、出版社にとっての著作権保護など、ビジネスモデルの観点から見て初めて解き明かせると思うのだ。Kindleというビジネスモデルの特徴は何か。一番大きな特徴は、文庫や単行本の代替品という思想で作られた製品だと言うことだと私は思っている。


    書籍というパッケージをそのまま電子的に置き換えた場合、そのビューアーというのがKindleの位置づけである。基本的に書籍を頭から終わりに向かって読み進めることを前提としてみれば良いデバイスであり、ユーザー体験も悪くない。しかし、たとえば音声や動画などマルチメディア化したユーザー体験を求めたり、文中の語句をネットで調べたり、好きなところだけ飛ばして読んだり、ということを考えたとき、現状のKindleはまだまだという印象を受ける。E-inkの仕様から、カラー化も難しいらしい。となると、ますます文庫の代替と言うことになる。


    逆にiPadはこういう問題点に対応した製品だろう。見つけた語句での検索やとばし読みなどもできる。音声や動画も問題ない。雑誌のような媒体を再現するにはうってつけだ。しかし、それなら何で電子書籍(ePub)なのか、Webでいいではないかとツッコミたくなる。WebならPCでもiPadでもよその端末でも読める。電子書籍というパッケージにするのは、ユーザーやメーカーの先入観と幻想、そしてDRMの問題でしかないのではないかと思ってしまう。そういう意味から、iPadは帯に短したすきに長しの隙間商品くさいなと思ってる。


    昨年末に友人とした会話を思い出す。アップルが電子書籍デバイスを出すと彼は言い張り、そんなもん作るのかという私と、ちょっとした言い合いになった。彼はiPadへの期待からか「電子書籍が流行ってる」と言いだすので、ついムキになって「どこで流行ってるんだ?そんな事実はないだろ」と言い返したのだ。ところが、今年に来て電子書籍元年みたいに言われ始めたので、これは自分の見込み違いだったと思っていたのだが、実際にはやはり私が思った通り、アメリカでもそれほど流行っていないようだ。たとえばKindle Storeを見てみると、ランキングの上位は名作系小説の詰め合わせばかりで、話題のベストセラーは乏しい。フランス語書籍はともかく、英語書籍も思ったほどはバリエーションが無い。点数はあっても同じ作品の別エディションばかりだ。おそらくは著作権フリーの書籍を売っているのだろう。商品が少ないのは、需要がない、つまりまだユーザーが少ないからだ。アマゾンも持ち出しでがんばっているようだが、まだそこまで市場が成熟していないようで、だからこそアップルも参入しようと思ったのだろう。


    たとえ日本でも電子書籍が販売されだしたとしても、結局、マスコミが言うほどiPadもKindleも日本の出版界へのインパクトは強くないと思う。iPadとKindleで日本の出版界が焦土になるなんて言ってる人がWebには結構いるけれど、電子書籍は常に「それならWebのほうがいいじゃん」というツッコミどころがつきまとっている。Webのほうが、検索もとばし読みも加工もしやすく利便性が高いからだ。パッケージであることを止めない限り、電子書籍は常に紙の書籍の代替でしかないが、パッケージを止めたらWebに近づくだけなのだ。単なる代替であるならば、今ある書籍から移行したいと思わせるだけのメリットを示さないと、わざわざお金を出して電子書籍端末を購入しようと思うのは、私のような電子書籍の未来に興味がある人か、ガジェット好きの人間にとどまるだろう。





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