2011年9月21日水曜日

【TV放映】葉山ジャズフェスティバル

昨日(2011/09/20)、J-COM湘南にて、たまたま葉山ジャズフェスティバルを放映していたので、これを見てみた。

葉山ジャズフェスティバルなるものの存在自体を知らなかったので、マイナーな人たちが出ているのかと思いきや、ハクエイ・キム、大西順子、アマンダ・ブレッカー、山中千尋、小曽根真&No name horses*1と国内でもメジャーで出ている人たちや、外タレが出ているので驚いた。客は分かって見に来ているのだろうか?

演奏自体は、小曽根真以外は皆1曲ずつの放映。フェスティバルはトリビュート・トゥ・ビル・エヴァンスとなってるのに、小曽根真が最後に「Waltz for Debby」をソロで弾いた以外はビル・エヴァンスと関係ない曲しか放映されていなかった(笑)。ハクエイ・キムは「Billy Jean」、大西順子は「Dr.Jackle」、アマンダ・ブレッカーは「It's too late」(もちろんキャロル・キング)、山中千尋は「八木節」だったので、視聴者に聴きやすい曲を選んだような気がする。いずれも素晴らしいプレイヤー達なのだが、ピアノを弾く人間から見て、どうしてもそれぞれの弾き方のタッチに注意が行く。

たとえば、山中千尋は桐朋音大~バークリー卒でクラシックのトレーニングを受けてきた人なのだが、いかんせん大変小柄な方なので、弾き方に相当な無理があるように見えた。手が小さいため、どうしても幅広いパッセージや和音では、手が平べったく伸びてしまい、力んでしまっているように見える。むろんピアニストは手だけで音を出すわけでなく、肘や肩、さらには背中まで使って音を出しているので(山中さんの背中は非常に筋肉が付いていた)、小柄でも正しい訓練を受ければしっかりした音を出すことは可能である。実際、山中さんの売りの一つは、小柄なのにダイナミックな演奏をすることにある。しかし、音の一つ一つがなめらかなビロードのようなパッセージを弾くには、やはり手が小さすぎるのだろう。しかも、小指を丸めてしまうと言う、クラシックであれば先生に絶対矯正される変なクセもあった。これもまた、手の小ささに起因するように思う。まぁ、だからこそ、ダイナミックなスタイルを選んだとも言える。逆に小曽根真は、手が彼女に比べて大きいので、あのようなオスカー・ピーターソン系の演奏に非常に向いているわけである(ただし、私はオスカー・ピーターソンも小曽根真も苦手であるが)。

ただ、上で書いたのは、あくまで自分の理想とするプレイスタイルが、脱力にあることから見た感想である。モンクなどは叩きつけるようなたどたどしいプレイをするし、どのようなスタイルもジャズでは許容されうる。この脱力と言うのは、弾いている指以外は力を込めていない、弾いている指も不要な力を込めない、と言うことを指す。完全な脱力を身につけることで、音が美しくなる。音量ではなく、音自体が美しくなるのだ。というと、何となくオカルトじみて聞こえるが、パッセージにしてみると明らかな違いが素人でも分かると思う。今のところ、完全な脱力をもって演奏するジャズピアニストは、南博さん以外に見たことがない(クラシックでは多数存在する)。脱力に関しては、クラシックでは多数本も出ているし、メソッドもいくつかあるので、いずれきちんと書いてみたい。

*1 1stトランペットはエリック宮代だったと思う。

2011年9月13日火曜日

【映画】 ゲンスブールと女たち [原題:Gainsbourg Vie Héroïque]

春先に公開しているのは知っていたが、いろいろ余裕が無くて見られないでいた映画『ゲンスブールと女たち(原題:Gainsbourg Vie Héroïque)』をセンター北まで行って見てきた。



上の予告編では普通の伝記映画のように見えるが、監督がバンド・デシネ(日本でいうマンガ)の作家出身と言うこともあり、実際にはゲンスブールをデフォルメしたような奇妙な人形が登場してきて、合間合間でいろいろと茶々を入れてくる演出がある。最初は、何を余計な演出してるんだ、と思ったが、歳の割にませてながらもどこかはにかみ屋のリュシヤン(ゲンスブールの本名だ)と、挑発者であり女たらしであるセルジュの間に立ち、このマンガ的なキャラクターが表向きの彼の言動では表現しきれない複雑な内面を代弁しており、演出として成功しているように思った。おそらく、予告編はこうしたマンガ的な演出を見て観客が敬遠しないように、意図的に普通の伝記映画のようにしたのだろう(欧米でははマンガやアニメは子供のものという意識がまだ強いのだ)。

ストーリーは年代順に彼の足跡を追るもので、ボリス・ヴィアンとの出会いや、ブリジット・バルドーやジェーン・バーキンらとの恋愛遍歴、ナチスネタのナチロックのリリース(ゲンスブールはユダヤ人)、フランス国歌のレゲエ化にまつわる国粋主義者からの反発とその歌詞の手稿のオークションでの落札など、有名なエピソードはだいたい散りばめられている。おそらく、その多くは伝記か何かをベースにしたものであろう。しかし、それらのエピソードを知っている人でないと、展開が分かりにくい部分もある(たとえば、ブリジット・バルドーのために作曲したはずの「Je t'aime...moi, non plus」が、特に説明がないままジェーン・バーキンとリリースするに至っている、など)。その意味では、展開のテンポの良さを確保するために、細部の描写が端折られている感じはあった。

さて、ゲンスブールと言えば、その歌詞が強烈な個性であるわけだが、一点、その翻訳に疑問を抱いた部分が有った。件の「Je t'aime...moi, non plus」での"moi, non plus"という言い回しなのだが、これは否定疑問文に対する同意なので、本来は「愛してる」という呼びかけに対して「俺も愛してないぜ」と言っているように訳されるべきであるにも係わらず、「そうかもね」みたいな風に(実際になんと翻訳しているか忘れた)辻褄を合わせようとした訳になっていた。フランス語としても変な言い回しなのは事実なのだが、この唐突さが逆に詞に強烈なインパクトを与え、肉体的な愛を歌った詞の中にどこか精神的な齟齬を感じさせる、ゲンスブールの天才業だというのに、それが上手く訳出されていないことが残念だった。

歌詞と言えば、もう一つ。前述した、ゲンスブールの分身たる人形が、あれやこれやと語りを入れるのだが、これがものすごく良い具合にテンポ良く曲に合っている。それはジャズ的なオブリガードとも、ラップ的なライムの入れ方とも違う、シャンソン独自のリズムなのだ。南博氏はアメリカで、黒人の会話が自然にスイングしていることに驚いたと書いていたが、この映画では会話がシャンソンのリズムを作っているのである。日本ではシャンソンはほとんど一部のマニアに限られた人気しかないが、ここから発展させた新しい音楽もありうるのではないか、と思わせられた。

キャストであるが、ゲンスブールを始め、バルドーやバーキンなど、よく見てみればそんなににて無いのにもかかわらず、彼らの持つ特徴をよく捉えた俳優を使っており、実際のゲンスブールの映像(DVDでリリースされているが、マスターテープの保管状態が悪いのか画質はそれなり)よりもこの映画で見た方が、臨場感を持って見ることができた。それにしても、ゲンスブール役は声もよく似ていたが、これは地声なのだろうか? R15指定だけあり、おっぱい満載(大抵巨乳だ)な上に、ゲンスブール役のペニスまでチラ見できるお得(?)さ満点。この作品をモザイクをかけずに上映したことに拍手したい。

関東地方での上映は9月16日まで。10月にはDVDとBlu-rayも発売される。だが、音楽も重要な要素なので、劇場で見ることをオススメしたい。
http://www.gainsbourg-movie.jp/theaters.html









2011年9月11日日曜日

【リリース情報】 John Coltrane - Original Impulse Albums Vol.5




約1ヶ月前にVol.4の発売を書いたばかりだが、なんとすぐにVol.5も出るという。あわわ、Impulse!でのコルトレーン流ドフリーが満載……で、どのアルバムが収録されるのかという情報を早くも入手したので、ここに記そう。

内容であるが、まず5枚目がLive In Japanというのが気になる(4枚組のはずなので)ため、ひょっとしたら日本でのSHM-CDに合わせたリマスターが一挙に進められていて、それに合わせてVol.6も出てくる……なんて言うこともあるかもしれない。また、Disc 1のLive In Seattleであるが、元々は2枚組で出ていたはずなので、1枚のみと言うのは?(追記:2011/09/12 Live In Seattleはオリジナルリリース時には1枚組だった。2曲の追加トラックを聞きたい場合は、再発のSHM-CDを買いましょう)


Disc 1: Live in Seattle feat. Pharoah Sanders
  1. Cosmos 10:49
  2. Out of This World 24:20
  3. Evolution 36:10
  4. Tapestry In Sound 6:07

Disc 2: Sun Ship
  1. Sun Ship 6:12
  2. Dearly Beloved 6:27
  3. Amen 8:16
  4. Attaining 11:26
  5. Ascent 10:10

Disc 3: Transition
  1. Transition 15:29
  2. Dear Lord 5:34
  3. Suite: A. Prayer and Meditiation: Day B. Peace and After C. Prayer and 21:19

Disc 4: Infinity
  1. Peace On Earth 9:03
  2. Living Space 10:40
  3. Joy 8:01
  4. Leo 10:08

Disc 5: Coltrane In Japan
  1. Spoken Introduction (Japanese) 1:39
  2. Meditations / Leo 45:31
  3. Peace On Earth 18:06
Live in Seattle」「Live in Japan」に関しては、日本版のSHM-CDが完全版である(ただし、Live In Japanに関しては、CD化に際し収録時間の制限から、日本人解説者による紹介のイントロが省かれている、はず)。なお、残りのインパルスのコルトレーンのアルバムは次の通り。「First Meditations」「Living Space」「Stellar Regions」「Interstellar Space」「Jupiter Variation」「The Oratunji Concert」。2000年代になってからのリリースも数点あるので、Vol.6以降にも期待したい。



クリムゾンのニューアルバム?「The Reconstrukction of Light」

クリムゾンが現行ラインナップでスタジオアルバムを作る予定はないと発言していることは有名だが、クリムゾンの最新スタジオアルバムと言えるかもしれない作品が登場した。それが6月発売されたばかりの「The Reconstrucktion of Light」だ。これは「The Constr...