2010年3月28日日曜日

電子書籍時代の印税契約



電子書籍のビジネスモデルについてエントリーを書こうと思ったら、すでにきちんとまとめられたエントリーがあったので、それを紹介しつつ、内容を補足したい。


http://satoshi.blogs.com/life/2010/03/books.html


Life is beautiful―iPadのインパクト:電子書籍のビジネスモデル


記事に関して、いくつかコメントすると、この記事にて引用されていた印刷の価格構成だが、「製版・写植代:12%」というのは少し古い情報だと思われる。DTPになって写植がいらなくなったからだ。あと、記事を読んで取り次ぎ不要を強調しすぎな気がした。というのも、そもそも取次が介在する余地がない、というよりAmazonやらAppleが取次兼書店となるからであり、そこに取次を敵視する表現を使う意義はないと思うからだ。


さて、私が補足したい内容だが、それは出版社と著者との関係である。上記ブログのエントリー末尾に「電子出版の時代に出版社が生き残るためには」として3つの項目が書かれているが、重要なのは支払いに関する部分だ。


紙の本では、これまで出版社が著者に払ってきた印税は、刷り部数×定価の10%である。これが、電子書籍になったらどうなるか。電子書籍には刷り部数というのが存在しない以上、売れた部数×定価のn%を一定期間ごとに支払いすることになるだろう。しかし、文筆業を経験した者であれば、これはちょっと……と思うのではないか。


著者にとって見れば、本を書くのはコストを先に負担している状態なので、できればすぐにマネタイズしたいと思うのが自然である。とすると、出版社と著者の契約形態として、あらかじめ想定部数分の印税を先渡しして、その部数を超えたあたりから部数あたりの印税を払う、というやり方もあり得るはずだ。最近は紙の本でも、刷りに対して極端に売れない場合があるので、保証部数(最低何部は売れるだろうという設定)で印税を払うケースもあるが、それに近い考え方だろう。電子書籍時代の出版社は、著者の収入を安定化するという機能も担うことになるのではないか。


印税を先渡しするリスクは当然あるわけで、その分、印税を低く設定したいという交渉もありえるはずだ。電子書籍時代には、これまでのように業界慣習の10%という横並びの価格設定は通用しない。部数を出せる著者は印税のパーセンテージが高くなり、知名度のない著者は低くなるということもあるだろう。同様に著者の側から見たら、あそこの出版社はパーセンテージが低いとか、向こうは高いとか、逆の評価もありえる。いずれにせよ、電子書籍が本格的にスタートすれば、しばらくは出版社と著者の双方で印税契約の模索が続くことになるだろう。





2010年3月8日月曜日

アゴラブックスはイノベーションか?



先週、経済学者の池田信夫氏が電子書籍ベンチャーを手がける会社「アゴラブックス」を立ち上げたことが、ネットで話題になった。以前から池田氏は、日本にも電子書籍の波が押し寄せていて、出版界の産業構造が変わろうとしているという主旨のことをブログ上で書いていたので、この展開は別に驚くに当たらない。


だが、「いったいどういうビジネスモデルなんだろう」ということが私には大きな疑問だった。池田氏は既刊本を電子書籍化する「著作権エージェントは出てこないだろうか」とブログで書いていたので、それがビジネスモデルと思ったのだが、「どこの馬の骨ともしれないベンチャーと組むよりも、自社でやってしまった方が利益率が良い」と出版社は考えるのが自然ではないだろうかと思っていた。そう思っていたら、J-castから興味深いニュースが出てきた。


http://www.j-cast.com/2010/03/07061675.html


まだ正式に事業展開を明らかにしたわけではないが、この記事をまっすぐに解釈するなら、彼らのビジネスモデルは「第3の電子書籍売り場を作る」ことだったわけだ。これは、既存出版社が抱える「アマゾンやアップルに流通を握られる」とか、「著者が出版社を通さずに直に本を売りだすのでは」という危機感に対応するものだろう。出版社の大同団結がうまくいかなそうだと言うこともあり、第三者の立場から冷静に状況を分析でき、且つ、技術的なノウハウを持っている、あるいはノウハウを持っている人たちを知っているアゴラブックスが入っていける余地がここにあったわけだ。


でも、これこそ池田先生が言う、ガラパゴス化のような気がする。既存の出版社の産業構造を維持させる方向に力を傾けているように、私には思えるからだ。出版界の流通構造を踏襲しない(=取り次ぎを通さない)ということは大きな意義だが、既存の本屋をそのままネット上に置き換えることを目指しているように見えて、そこにイノベーションは感じられない。


既刊本を本当に皆は電子書籍で読みたいのだろうか。たしかに、これはKindleで読めたら便利だよなという本は存在する。けれど、本当に電子書籍化の意義があるのは、電子書籍ならではの本なのではないだろうか。これまで紙では出てこなかったような本が電子書籍で出てくる、そしてそれが新しい需要を喚起する、それこそがイノベーションというものではないだろうか。


たとえばePub形式はスクリプトを仕込めないなど、インタラクティブな要素はあまり考慮していないので、フォーマット的には少しも新しくない。電子書籍はインターネットほどに新しくないのだ。よって、月並みだが、編集の力こそが著者と売り場の間に出版社が入りうる余地だと思うし、それは電子書籍時代になっても変わらないものじゃないかと思っている。編集が必要とされなくなれば、出版社は滅びるだけしかないだろう。


とはいえ、池田先生もまだおもしろいことを仕込んでいるかもしれない。今月の25日にアゴラブックスのビジネスモデルが発表されるという。月末にiPadも発売になると言うし、この3月は出版界にとって激動の1ヶ月になるのかもしれない。


P.S.ちなみに、アゴラブックスが提携を進めているという出版社は、魔法のiらんどを子会社化したアスキー・メディアワークスだと予想しているが、どうだろうか。池田先生もWebアスキーに連載を持ってるしね。


追記・5日にiPadは四月と発表が出ていたんですね。気がつきませんでした。





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