ここ数年、音楽と言えばジャズばかりを聴いてきたのだが、去年の前半ぐらいから、徐々にロックを再び聴くようになってきた。ジャズでは考えられないようなコードチェンジや、アレンジ・楽器の使用法がが改めて新鮮に聞こえたからである。特にこれまで手を出そうとしなかった、御三家以外のプログレに徐々に手を出し始めた。去年の前半はカンとマグマを、年末はゴングをよく聞いていた。
で、そのマグマの創始者であるクリスチャン・ヴァンデがいま2chでちょっとした話題となっている。彼は実はナチと第三帝国の崇拝者であり、独自の想像言語コバイア語で歌われる歌詞も、ヒトラーの演説を音韻的に模倣したものであるというのである。たとえば、代表作の一つである、MDKの"Fuhl mehn Fuhl ehndoh litaah"が"für mein Führer Adolf Hitler"の音韻的模倣であるという具合に。
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/progre/1243566397/250-450
このスレでは海外のフォーラムも参照とされていて、海外ではかなり議論されているようだ。何でも近年のコンサートでは、コンサート後のバーでクリスチャンが酔った勢いで黒人差別発言を繰り返していたのを何人ものファンが目撃したのだという。
かなり奇妙な話だ。マグマ結成のきっかけはコルトレーンの死だったと語り、オーティス・レディングに捧げる曲まで作り自ら歌っていたのは、他ならぬクリスチャンであったはずなのに。エルヴィン・ジョーンズを敬愛していたはずの彼が、本音では黒人差別主義者だったというのか。それとも、人種論から導き出された結論だというのだろうか。
また、どうやら聴くところによれば妻であるステラ・ヴァンデ(近年はステラ・リノンと名乗っているらしい)はユダヤ人であるという。そのほかにも、歴代メンバーにはユダヤ人がいるそうだ。いったいこの論理的な矛盾は何か?
しかし考えてみれば、マグマが題材としてきたような神話の世界は、本来的には論理で構築された世界とは一線を画すものだ。そこでは論理的な破綻や矛盾、背徳や理不尽が奇妙に同化して、スペクタクルを織りなしている。ヒトラーと第三帝国が持つ神秘主義や奇妙な理論に魅惑を感じる者はオカルト者には少なくないが、クリスチャン・ヴァンデのヒトラー崇拝の源泉もそこにあったのではないか。ゴングのデヴィッド・アレンも「Magick Brother」のMagicをMagickと綴ることでアレイスター・クロウリーへのリスペクトを見せたように。
こうした目で見てみれば、論理一貫しないことで一貫しているという、ある種パラノイアとしか思えない、アクロバティックなまでの雑種性が、実はマグマの神話的音楽の源泉だったのではないかという気なでしてくる。しかしされとて、疑問は尽きない。
ちなみに、大里俊晴氏はマグマのことを「クリスチャン・ヴァンデがファシストだから嫌いだ」と言っていたのを思い出した。彼がファシストであることは、かなり昔から言われていたことらしい。
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