電子書籍のビジネスモデルについてエントリーを書こうと思ったら、すでにきちんとまとめられたエントリーがあったので、それを紹介しつつ、内容を補足したい。
http://satoshi.blogs.com/life/2010/03/books.html
Life is beautiful―iPadのインパクト:電子書籍のビジネスモデル
記事に関して、いくつかコメントすると、この記事にて引用されていた印刷の価格構成だが、「製版・写植代:12%」というのは少し古い情報だと思われる。DTPになって写植がいらなくなったからだ。あと、記事を読んで取り次ぎ不要を強調しすぎな気がした。というのも、そもそも取次が介在する余地がない、というよりAmazonやらAppleが取次兼書店となるからであり、そこに取次を敵視する表現を使う意義はないと思うからだ。
さて、私が補足したい内容だが、それは出版社と著者との関係である。上記ブログのエントリー末尾に「電子出版の時代に出版社が生き残るためには」として3つの項目が書かれているが、重要なのは支払いに関する部分だ。
紙の本では、これまで出版社が著者に払ってきた印税は、刷り部数×定価の10%である。これが、電子書籍になったらどうなるか。電子書籍には刷り部数というのが存在しない以上、売れた部数×定価のn%を一定期間ごとに支払いすることになるだろう。しかし、文筆業を経験した者であれば、これはちょっと……と思うのではないか。
著者にとって見れば、本を書くのはコストを先に負担している状態なので、できればすぐにマネタイズしたいと思うのが自然である。とすると、出版社と著者の契約形態として、あらかじめ想定部数分の印税を先渡しして、その部数を超えたあたりから部数あたりの印税を払う、というやり方もあり得るはずだ。最近は紙の本でも、刷りに対して極端に売れない場合があるので、保証部数(最低何部は売れるだろうという設定)で印税を払うケースもあるが、それに近い考え方だろう。電子書籍時代の出版社は、著者の収入を安定化するという機能も担うことになるのではないか。
印税を先渡しするリスクは当然あるわけで、その分、印税を低く設定したいという交渉もありえるはずだ。電子書籍時代には、これまでのように業界慣習の10%という横並びの価格設定は通用しない。部数を出せる著者は印税のパーセンテージが高くなり、知名度のない著者は低くなるということもあるだろう。同様に著者の側から見たら、あそこの出版社はパーセンテージが低いとか、向こうは高いとか、逆の評価もありえる。いずれにせよ、電子書籍が本格的にスタートすれば、しばらくは出版社と著者の双方で印税契約の模索が続くことになるだろう。
もし再販制が適用されなくなるとしたら、印税は「卸価格×実売数×n%」になるような気がします。引用元の記事もそうですが、「パーセントの数値」だけが一人歩きしている感がありますね。まず、何を「基礎数値」とするかの検討が必要なのではないでしょうか。
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