昨日(2011/09/20)、J-COM湘南にて、たまたま葉山ジャズフェスティバルを放映していたので、これを見てみた。
葉山ジャズフェスティバルなるものの存在自体を知らなかったので、マイナーな人たちが出ているのかと思いきや、ハクエイ・キム、大西順子、アマンダ・ブレッカー、山中千尋、小曽根真&No name horses*1と国内でもメジャーで出ている人たちや、外タレが出ているので驚いた。客は分かって見に来ているのだろうか?
演奏自体は、小曽根真以外は皆1曲ずつの放映。フェスティバルはトリビュート・トゥ・ビル・エヴァンスとなってるのに、小曽根真が最後に「Waltz for Debby」をソロで弾いた以外はビル・エヴァンスと関係ない曲しか放映されていなかった(笑)。ハクエイ・キムは「Billy Jean」、大西順子は「Dr.Jackle」、アマンダ・ブレッカーは「It's too late」(もちろんキャロル・キング)、山中千尋は「八木節」だったので、視聴者に聴きやすい曲を選んだような気がする。いずれも素晴らしいプレイヤー達なのだが、ピアノを弾く人間から見て、どうしてもそれぞれの弾き方のタッチに注意が行く。
たとえば、山中千尋は桐朋音大~バークリー卒でクラシックのトレーニングを受けてきた人なのだが、いかんせん大変小柄な方なので、弾き方に相当な無理があるように見えた。手が小さいため、どうしても幅広いパッセージや和音では、手が平べったく伸びてしまい、力んでしまっているように見える。むろんピアニストは手だけで音を出すわけでなく、肘や肩、さらには背中まで使って音を出しているので(山中さんの背中は非常に筋肉が付いていた)、小柄でも正しい訓練を受ければしっかりした音を出すことは可能である。実際、山中さんの売りの一つは、小柄なのにダイナミックな演奏をすることにある。しかし、音の一つ一つがなめらかなビロードのようなパッセージを弾くには、やはり手が小さすぎるのだろう。しかも、小指を丸めてしまうと言う、クラシックであれば先生に絶対矯正される変なクセもあった。これもまた、手の小ささに起因するように思う。まぁ、だからこそ、ダイナミックなスタイルを選んだとも言える。逆に小曽根真は、手が彼女に比べて大きいので、あのようなオスカー・ピーターソン系の演奏に非常に向いているわけである(ただし、私はオスカー・ピーターソンも小曽根真も苦手であるが)。
ただ、上で書いたのは、あくまで自分の理想とするプレイスタイルが、脱力にあることから見た感想である。モンクなどは叩きつけるようなたどたどしいプレイをするし、どのようなスタイルもジャズでは許容されうる。この脱力と言うのは、弾いている指以外は力を込めていない、弾いている指も不要な力を込めない、と言うことを指す。完全な脱力を身につけることで、音が美しくなる。音量ではなく、音自体が美しくなるのだ。というと、何となくオカルトじみて聞こえるが、パッセージにしてみると明らかな違いが素人でも分かると思う。今のところ、完全な脱力をもって演奏するジャズピアニストは、南博さん以外に見たことがない(クラシックでは多数存在する)。脱力に関しては、クラシックでは多数本も出ているし、メソッドもいくつかあるので、いずれきちんと書いてみたい。
*1 1stトランペットはエリック宮代だったと思う。
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