結局なんだかんだ言って、ガセネタ In the boxを購入してしまった。10枚組。なんてことだ、聴くだけでもちょっとした拷問だ。自分で言うのも何だが酔狂としか言い様がない。まだ半分しか聴き終えていないが、この時点で言えることはオススメだと言うことだ。ただし留保点がいくつも付くので、詳しく読むように。行くぞ。
まず、この音源に音質を求めてはいけない。
ほとんどがオーディエンス録音である上、スタジオ録音ですらワンマイクで録っている。ベースが聞こえるときはボーカルは聞こえず、ボーカルが聞こえるときはベースが聞こえず、両方がハッキリ聞こえるときは音はスカスカという、音質としてはブートレッグと大差ないどころかサウンドボード録音やエアチェックのブートのほうがまだマシだ。まぁ、世にはキングクリムゾンの「Earthbound」すらネタにするDJもいるぐらいなので、音質が悪くても気にしないという人間は居るだろう。ましてや、音質が悪いからこそ荒々しいガレージサウンドが表現されているとも言える。
そして、曲のバラエティなどを求めてはいけない。
ガセネタのレパートリーはたったの4曲だけだ。「宇宙人の春」「父ちゃんのポーが聞こえる」「雨上がりのバラード」「社会復帰」のみ。
それだけでCD10枚が埋められるのかって? 埋めてるんだこれが。
Disc 1、2は「雨上がりのバラード」のみ全21曲、Disc 3、4は「父ちゃんのポーが聞こえる」のみ全20曲、Disc5は良心的だぞ、「宇宙人の春」が8曲だけと「社会復帰」が3曲だけ。Disc 6はアウトテイクと称して今まで挙げた4曲が何曲かずつか計16曲。Disc 7は未聴だが初期セッションが3テイク、Disc 8はガセネタのメンツに誰かが加わったりしたような変則編成の9曲(今挙げた4曲以外も入ってるけど、これらはガセネタの演奏と言っていいのか?)、Disc 9ではハイライズによるガセネタ曲演奏(一部で山崎晴美や大里俊晴も参加している)、最後、Disc 10はMOODMANによるノンストップミックスが3つ。
さあどう? 買う気でた? 俺ぜんぜんわかんないんだけど。
結局、ガセネタとは、山崎、浜野、大里という3人が、何も知らないまま突き進んで、とんでもない方向に皆で行こうとして、そして終わるしか無かったバンドだったんだと思う。誰もが子供のままでいられないように、彼らもガセネタで活動し続けるほどの純粋さ(純粋さとは無垢とは限らないぜ)を保つことはできなかったと思う。10代の終わりから20代頭にかけての微妙な季節は、無残にも終わりが来る。大里は「いつも同じ事はしなかった」と言うけれど、一方で「終わり続け」ていたとも書いている。冷静にこの10枚組を聞けば、たしかに彼らは同じ音は弾かなかったかもしれないけど、同じ事の繰り返しにも聞こえる。そう、彼らは最初っから終わりにたどり着いていたから、先には行けなかったんだ。
大里にできたことは、そこから降りることだった。事実はどうであれ、彼は降りたんだと自分で思っていたんだと思う。そして、その後ろめたさが、その総括たる書籍「ガセネタの荒野」になったんじゃないかな、と思うのは、彼の隠れたロマンティストぶりを垣間見たから言えるのだろうか。
結局、この原稿も先に行けそうにない。終わり続けるしかなさそうだ。彼らが残した、もうこの機会を逃したら2度と手に入らないだろう10枚のCDを聴きながら。
<追記>
なんと、10月にはグレイテスト・ヒッツなるCDが出るらしい。未発表テイク収録だそうだ。なんだそりゃ。
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